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ペットを守る法律アレコレ

外でつながれた犬に子供が噛まれました。勝手に触ったほうが悪い?【第20回】

編集部 まめお | 2017年10月11日


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質問

スーパーの外でつながれた犬を子供が撫でようとして噛まれてしまいました。勝手に触ったほうが悪いのでしょうか?

 

 

 

答え

飼い主が責任を負うことになるでしょうが、過失相殺の可能性があります。

kuri
この記事の制作・監修

栗脇法律事務所 栗脇康秀弁護士
福岡県弁護士会所属。早稲田大学法学部卒。損害補償事件を中心に、依頼者に安心・納得・解決力をお届けします。
http://kuriwaki.jp/

ペットの飼い主が負う責任

ペットが人に怪我をさせた場合、ペットの飼い主は原則として不法行為責任を負います(民法718条1項本文、民法709条)。なぜなら、ペットには人間と同じように理性的に行動することを期待できないため、飼い主がペットを管理する責任を負うからです。もっとも、飼い主が「相当の注意」をもってペットを管理していたときは、例外的に飼い主の責任が否定されます(民法718条1項ただし書)。また、被害者にも落ち度があった場合には、過失相殺により飼い主の責任が軽減されることもあります(民法722条2項)。
以下では、「相当の注意」及び過失相殺について、もう少し詳しくみていきましょう。

 

相当の注意とは?

最高裁判所昭和37年2月1日判決は、「相当の注意」とは、「通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処しうべき程度の注意義務まで課したものではない」と判示しています。具体的には、動物の種類(大型犬か小型犬かなど)・性質(人を襲うくせがあるかなど)・保管の状況等を考慮して判断されます。
例えば、広島高等裁判所松江支部平成15年10月24日判決は、小学生が飼犬に咬まれ、後遺症が残ったという事案で、飼犬に人を咬む癖があったことから、通常以上の注意をもって管理する必要があるとしたうえ、「犬に触らないで下さい」と記載した看板を設置しているだけでは、「相当の注意」を尽くしたとは認められないとし、飼い主は、咬まれた小学生に対して40万円の賠償責任を負うとしています。
一方、東京地方裁判所昭和52年11月30日判決は、通り抜けのできない空き地上の物置の柱に長さ約2メートルの鎖でつないで飼育していた犬が、空き地への立入者に咬みついたという事案において、飼犬に人を咬む癖はなかったこと等も考慮し、「相当の注意」が尽くされていたとして、飼い主の責任を否定しています。
ただ、この「相応の注意」が認められるケースは、決して多くはありません。

 

過失相殺

「相当の注意」を尽くしていなかったとして飼い主の責任が認められる場合でも、被害者側に落ち度がある場合には、過失相殺により飼い主の責任が軽減されることがあります。なぜなら、被害者側に落ち度がある場合には、その分飼い主の責任を軽減することが、損害の公平な分担という損害賠償の目的に適うからです。
例えば、上記広島高等裁判所松江支部平成15年10月24日判決は、被害者の小学生が、咬み癖のある飼犬であることを知りながら近づいたことから、被害者に50パーセントの過失があったと判断し、飼い主の責任の軽減を認めました。

 

被害者がお子さんの場合

では、被害者が、危険性を理解できない小さなお子様であった場合はどうでしょう。最高裁判所昭和39年6月24日大法廷判決は、過失相殺をするためには、被害者側に、「事理弁識能力」が必要と判示しました。「事理弁識能力」とは、道理を弁えることができる能力のことをいいます。そのため、「事理弁識能力」が否定される小さなお子様の場合には、基本的に過失相殺はできず、飼い主の責任の軽減は認められません。
もっとも、被害者「側」の過失が認められれば、なお過失相殺の余地はあります。被害者側の過失とは、たとえ被害者本人に「事理弁識能力」がなくても、被害者側という一群のグループの誰かに過失があれば過失相殺できるという法理をいいます。そして、最高裁判所昭和34年11月26日判決は、被害者側とは「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者」であると判示しました。したがって、幼児の場合には、監督者である父母がこれにあたることになります。
以上をまとめると、次のようになります。すなわち、被害者が幼稚園児くらいまでの小さなお子さんの場合、「事理弁識能力」がないため、被害者の過失を考慮して過失相殺をすることはできません。もっとも、被害者のご両親に、お子様を十分注意して見ていなかった等の過失が認められる場合には、ご両親の過失を考慮して、過失相殺がなされ、飼い主の責任が軽減されることになるのです。

結論

このように、ペットが人に損害を与えた場合には、様々な事情を考慮して、飼い主の責任の有無・程度が決められることになります。
今回の件では、スーパーの外という、人通りの多い所につないだ場合、飼い犬が歩行者にとびかかったり咬みついたりする危険性がないとは言えないため、飼い主の責任がないとは言いづらいでしょう。一方で、咬まれた方にも責任がある可能性があり、その場合には過失相殺がされると言えそうです。

 

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