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文壇は猫がお好き。春の暖かい午後に読みたい猫文学【第26回】

編集部 まめお | 2018年03月27日


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文壇は猫がお好き。
春の暖かい午後に読みたい猫文学

 

『吾輩は猫である』や『100万回生きた猫』など、文学に猫が入り込んでいることが多々あります。文壇の中でも猫好きの人は多いものです。ぽかぽか陽気のこの春、猫文学で心を和ませてみるのはいかがでしょうか。今回は春の読書にピッタリの、猫を題材とした本をご紹介します。様々な猫たちをじっくりと味わってみてください。

目次

猫を愛した文壇たち

猫好きと言われる文豪たちは、猫と一緒に写っている写真が残されていることが多いです。写真を見てみると、そこには気難しい顔をした文豪が猫を愛でる姿が。そのような姿には、なんともほっこりさせられます。たとえば日本の猫好き文豪として、必ずといっていいほど名が挙がるのは、谷崎潤一郎。明治末期から昭和中期まで活躍した小説家です。谷崎は西洋の猫が好きで、とくにペルシャ猫がお気に入り。『猫と庄造と二人のおんな』では、女性を引き立たせる役割として、ペルシャ猫を登場させています。

また、『鞍馬天狗』シリーズで有名な大佛次郎も大の猫好き。生涯面倒を見てきた猫は、なんと500匹以上だというから驚きです。もちろん、猫と一緒に写っている写真も多く残っていますよ。猫を題材とした小説、童話、エッセイも数多く、猫に対する愛情は少々異常かもしれません。

その他金沢出身の室生犀星は、猫とともに火鉢で温まる写真が有名。火に当たる飼い猫ジイノも、とにかくかわいらしいのです。このように、文豪は猫に魅力を感じる人が多いようです。猫の気ままさが文学と相性ピッタリなのでしょうか。

SF?摩訶不思議な世界の猫

猫が登場する文学作品といえば、心が和むようなほっこりしたものを想像する方が多いでしょう。しかし変わりネタとして、猫とSFのコラボレーション作品もいくつか見られます。ちょっぴり不思議な世界観の猫たちにも会いに行ってみましょう。

○ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

主人公の飼い猫ピートは、冬を迎えると家の中で「夏へ通じる扉」を探し始めます。本来ならばそんなことはあり得ませんが、ピートはたくさんの扉のうちの一つが、夏へ通じるのだと信じて疑いません。その時主人公もあらゆる裏切りに傷ついて、心は冬のように凍っていました。そんな最中出会った「冷凍睡眠」が、物語の歯車を動かします。

SF作品の中では有名な名作です。猫は登場しますが、それを抜きにしてもSF界では王道中の王道。1956年に発表されてもなお、内容に古さを感じさせません。むしろ新しささえ感じ、現在でも楽しめる内容となっています。現在では様々なSF映画が生まれ、タイムスリップや近未来やロボットなどがおもなキーワードとして用いられていますが、本書にはその原点が詰まっています。現実の猫の姿だけではない、猫に秘められた神秘性も感じていただきたい作品です。

○シオドア・スタージョン他『猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』

本書は、個性豊かな10匹の猫たちが活躍するSFアンソロジー。内容は地上編と宇宙編に分かれており、それぞれの場所で猫たちが能力を発揮します。時には愛くるしく、時にはミステリアスに、冴えわたる頭脳を持っているかと思えば、本能むき出しの姿を露わにする……そんな猫の姿が満載です。
本書だけで一気に猫SFを堪能できるため、入門書としてはピッタリの一冊と言えるでしょう。収録されている10編はすべて著者が異なり、それぞれの色を楽しめるのも魅力の一つ。まさに十人十色の猫たちを読むことができます。「人によって、思い描く猫の姿がこんなにも違うのか」と思わされることでしょう。

 

気軽に読める、猫エッセイ

現代でも猫を飼う作家は多く、猫との生活を題材としたエッセイは豊富にあります。猫愛の強い作品の中から、とくにおすすめしたいエッセイ集をご紹介しましょう。

○角田光代『今日も一日きみを見てた』

角田光代さんの飼い猫・トトへの愛情が溢れ出るエッセイです。トトは著者にとって初めての飼い猫で、著者はトトの行動一つひとつに感動します。猫と暮らしながら日々芽生える感情が、この本の中にぎっしり詰まっています。きっと猫飼いの皆さんならば、共感してしまうエピソードが満載でしょう。

○町田康『猫にかまけて』

こちらは飼い猫たちとの生活、そして別れを、著者特有の「町田節」で描いたエッセイです。多当飼いだと、どうしても出会いと別れの繰り返しを経験することになりますが、その度に命の重さをひしひし感じます。挿入されている写真もまた涙を誘い、猫への愛おしさが募る一冊です。

○星野博美『のりたまと煙突』

引っ越し先で猫と出会った「猫嫌い」の著者が、様々な出来事を通して、生と死について考えます。タイトルからはほんわかとした雰囲気が漂いますが、ページをめくってみると命の重さがつきまとう一冊です。現在猫を飼っている方にも、そうではない方にもぜひ読んでもらいたい猫エッセイ。

○保坂和志『猫の散歩道』

猫が関係するエピソードの他、日々の小さな出来事がたくさん詰まったエッセイ集です。とにかく一編が短く、読書の習慣がない方でもさらりと読めてしまうのが特徴。少し時間の空いた時に、ほっこりしたい方へおすすめです。

○内田百閒『ノラや』

著者の家の庭にやって来る野良猫「ノラ」。エサを与えてかわいがっていたノラは、突然著者の元から消えてしまいます。そんな著者の悲しみに暮れる心模様を描いたエッセイです。ノラが帰ってこないことに嘆く著者に、少しかわいらしいと感じてしまうかもしれません。

 

これだけの猫文学を読んでいると、猫は生活の中に自然と馴染む生き物だということが分かります。自由奔放に行動する猫特有の魅力が、次々と人間をとりこにさせるのかもしれません。この春、猫好きの方は猫文学で癒されてみてくださいね。

 

 

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